
ところで、八重歯はなぜできるのでしょうか?
その原因には、歯の生える順番と顎の大きさが影響しています。
成人の歯は、上14本、下14本の合計28本あり、一般的には6歳ごろから乳歯から永久歯へと生え変わります。順番は、まず第1大臼歯(上の奥歯から2番目)が生え、次に中切歯、側切歯(上・下の前歯)と続き、最後に第2大臼歯(上の奥歯)です。通常は、12歳〜13歳ごろまでに全部の歯が揃います。
一方、犬歯が生えてくるのは11歳〜12歳ごろと、ほかの歯に比べると比較的遅い時期。通常でしたら何も問題なくきれいに生えてきます。ところが歯と顎の大きさが調和していないと歯のサイズだけが大きくなり、犬歯がきちんと納まる場所がなくなってしまいます。そのため歯の列から前に飛び出してしまい、八重歯となってしまうのです。
この八重歯、見た目の印象を悪くしてしまうだけでなく、お口の健康を考えたらちょっと考えもの。八重歯の隅々まで歯ブラシがあたらないため、虫歯や歯周病、歯肉炎といった、さまざまなトラブルを招く可能性があります。人によっては唇の内側の肉を噛んでしまい、歯肉を傷つけ炎症を起こしてしまうことも。このようなトラブルを抱えている人は、矯正治療などで歯並びを整えることで解消することができます。
八重歯を治療し歯並びを整える治療法には、1.人工の歯を使う(差し歯やブリッジ)、2.自分の歯を動かす『歯列矯正』、などがあります。

八重歯を含む上の前歯2〜6本だけのように、部分的な治療に向いています。治療期間は2〜3か月と短く、歯列矯正より比較的早く歯の大きさや色を揃えることができます。
治療方法は、まず歯冠(歯全体)を削り、歯の神経を取り、薬を詰めた後、歯根(歯の根っ子)だけを残します。その後、歯根に土台を埋め込み、その上からセラミックなどで作った人工の歯(クラウン)を被せて完了です。
クラウンにはオールセラミックスや、裏側に金属を使ったタイプ、保険が適用できるプラスチック素材などがあります。どのタイプにするかは、自己判断。それぞれにメリット・デメリットがあり費用も異なるので、十分な説明を受けた上で選びましょう。
そのほかに、八重歯を抜いてブリッジにする方法や、インプラントを埋め込む方法などがあります。
歯全体のバランスを整え正しい噛み合わせにするときは、歯列矯正を行います。
治療方法は歯に矯正装置を取りつけ、ゆっくりと歯を動かしながら正しい位置に戻していきます。その際、歯が大きい人や顎が狭い人は、歯が移動するためのスペースが必要なため、上下各1〜2本の歯を抜くこともあります。このとき歯が移動するまでの期間は2年以上です。一方、表面をごく薄く削り歯を小さくして(0.5〜1ミリ程度の範囲)矯正する場合、1年ほどで完了する可能性があります。治療期間は歯の状態や治療方法などによって個人差がありますが、おおよそ1年〜2年半が目安です。
一昔前は、歯の表面に金属の矯正装置を取りつけていました。そのため口を開くと装置が目立ち、矯正を躊躇していた人も多かったようです。最近では改良され、歯の裏側にセラミックを装着する舌側矯正(裏側矯正)などがあり、口を開けた時に目立たない装置を使い矯正する人も増えています。
八重歯や乱杭歯(らんぐいば・乱れた歯並び)の矯正は、歯並びの状態により治療法が異なります。
大きく分けると次の3パターンがあります。
八重歯や乱杭歯の状態によっては、歯を全体的に広げながら移動させて矯正します。矯正治療の方法は、奥歯を後方にずらし歯の移動スペースを作る、歯列全体を拡大させて移動させる、など。
症状が軽い場合は、歯の表面のエナメル質を削り(0.5〜1ミリ程度)歯を小さくし、矯正します。削る量は1つの歯につき最小限なので痛みはありません。上顎だけの乱杭歯で部分矯正を行うときなどがこのケースにあたります。
八重歯があり、歯が全体的にでこぼこしていているときは、抜歯をします。
歯と顎の大きさが調和していないと、不揃いな歯並びになります。通常は正常な位置に生えようとしますが、窮屈なスペースの中ではおしくらまんじゅうの状態になり、列からはみ出してしまうため凸凹になってしまうのです。そこで抜歯をすることで顎全体に余裕ができ、歯が楽に動くようになります。
通常、抜歯するのは八重歯(犬歯)のすぐ奥にある小臼歯(上下・左右、計四本)です。
これには3つの理由があります。
人工の歯(差し歯やブリッジ)で治す、あるいは歯列矯正を行う、いずれの場合でも、それぞれに一長一短があるため、どちらを選ぶかは歯や顎の状態、治療にかかる期間や治療費など、総合的に判断する必要があります。自己判断せず、信頼のおける歯科医と相談しながら決めましょう。
差し歯のメリットは、なんといっても治療期間が短いこと!歯を抜いたり削ったりして人工の歯を被せることで、きれいな歯並びにします。治療期間は八重歯の状態や本数によっても異なりますが、簡単な場合で3〜8回程度。複雑な場合や本数が多いときでも、3〜4か月程度で完了します。
人によっては歯の大きさのバランスが崩れていたり、歯の色が違っていたりすることがあります。このような場合は、前歯2〜6本を差し歯にする、あるいは抜歯してブリッジにすることにより、歯の大きさのバランスを整え、色を統一することができます。歯並びだけでなく見た目もきれいになりますね。
差し歯(クラウン)の素材には多くの種類があります。中でも高級陶材を使ったオールセラミックス差し歯は歯肉に優しく、耐久性がある優れもの。歯の色を微妙に調整でき、本物の歯と区別がつかないほど透明感あるきれいな仕上がりになります。長年使用していても、歯と歯茎の間に出る黒ずみもありません。金属を一切使用していませんので、金属アレルギーがある方は、安心して使えるといえます。
一番のデメリットは、健康な歯を削ってしまうということ。歯の根っ子は残していますが神経を抜いてしまうため、健康な歯に比べるともろくなりやすいといえるかもしれません。また、治療方法によっては抜歯の可能性もあります。差し歯を被せた後、歯と歯茎の境目や根っ子の部分に虫歯ができることもありますので、デンタルケアも忘れずに。
年齢を重ねていくと歯は退化し、歯茎も下がってくるため、差し歯がぐらつき、場合によっては抜け落ちてしまう可能性もあります。そのようなときは、歯と歯茎の状態に合わせ、新しく作り直す必要がでてきますので、定期的な歯の健康診断を受けるように心がけておくといいでしょう。
ところで、長い間使用していると差し歯そのものが変色したり、歯と歯茎の間が黒ずんできたりすることがあります。これは差し歯(クラウン)の素材に金属を使っているときに表れる症状。歯の表面に、溶け出してきた金属のさびが付着するために起きるもので、差し歯の素材にセラミックスを使うことで防ぐことができます。
ごくまれに、極端に固い物を噛んだときに、差し歯が欠けてしまうことがありますが、通常は心配する必要はありません。
矯正治療の最大のメリットは、自分の歯を残したまま治療が行えるということ。
“差し歯”の場合、歯の根っ子(歯根)は残っているものの、神経を抜いて処置を行うために、健康な歯に比べて寿命が短くなる可能性もあります。それに対し、『歯列矯正』は歯を削ったり神経を抜いたりしてダメージを与えることがありません。歯を正しい位置に移動させる治療法なので、歯の寿命を縮めることがないのです。
矯正治療は、顎と歯の状態を考慮しながら治療を行いますので、正しい噛み合わせを作ることができます。その結果、不正咬合が原因で引き起こされる可能性がある、顎関節症(がくかんせつしょう)、肩コリ、頭痛などが改善されることもあります。また、気になる部分や顎の状態、治療期間、治療費を考慮した上で、部分矯正、全体矯正などの中から最適な治療方法を選択できます。
舌側矯正(裏側矯正)の場合、矯正装置を歯の裏側に取りつけますので、ワイヤーが目立つことがなく、ほかの人に気づかれずに矯正できます。
そのほか八重歯と乱杭歯の併発など、複雑なケースでも矯正できるので、正しい歯並びと噛み合わせにするための“オールマイティ”な治療法といえるかもしれません。
歯をゆっくりと動かしながら歯並びを整えていくため、どうしても治療期間が長くなりがちです。さらに矯正装置の取りつけや定期検診の必要などがあるため、人工の歯を使った治療に比べると、症例によっては治療費が高めになってしまうこともあります。
自分の歯を動かしながら歯並びを整えていきますが、場合によっては歯を削ったり、抜いたりすることがあります。抜歯が必要な場合は、歯に対し顎が小さすぎるとき。逆に歯が大きすぎるときは、大きめの歯を削って小さくし(0.5〜1ミリ程度)、歯の移動スペースを確保します。これらは理想的な歯並びを作るためには大切なことといえます。
矯正後の歯は、矯正前の位置に戻ろうとする性質があるため、矯正装置をはずすと元に戻ってしまいます。これを『後戻り』といいます。それを防ぐためには、歯を動かす期間が終わったら、自分で取り外しができる「リテーナ」と呼ばれる保定装置を使い、歯をしっかりと固定させる必要があります。「リテーナ」を装着する期間は、歯を動かした年数と同じだけ必要で、たとえば、1年半かけて歯を動かした場合、「リテーナ」も1年半使用して歯を完全に定着させます。
矯正装置をつけていると、人によっては舌にあたり痛くなる、喋りにくい、などの違和感を訴えることがあります。また、定期調整後の2〜3日間は、歯が浮いたように感じたり、歯が動くときに痛みを感じたりすることもあります。これらは徐々に治まっていきますので、心配することはありません。